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9月のごあいさつ


雨はアスファルトに羽根を広げた蝉に容赦なく打ち付けて夏に幕を引き、庭では夜が開けきれぬ早朝から秋虫が鳴き始めている。

いつからだろう
春、夏、秋、冬と季節は静かに移行するものと思っていたら
極端な気象現象でストレスをかけてくる。
それでなくても
コロナは変異するし、人の動きを制御するからダブルパンチだ。
どこにもぶっけられない悶々とした思いはこの地球全体で共有しているからまだ我慢ができている。

巷の煩わしさから目を背け、自宅付近を朝ゆっくりと散歩してみる。

あっ、低木のひっそりとした場所で秋海棠(シュウカイドウ)が咲きはじめた。深い緑の中にふぁっと咲くピンクの花が好き。

角を曲がったこの家はイチヂクが実る家。
手のひらを広げたような大きな葉の先に魅力的な色合いで無花果(イチヂク)が実って存在をアピールしている。

生け垣に郁子(むべ)を這わせてある重厚な家。青々としたツルの下にぷっくりと重さを保ちムベが色をだんだん増してきた。
それぞれの庭にそれぞれの秋の気配。

せめて食卓で
せめて旬の味覚で、
心を満たそう。

味覚の秋に入ったのだから。

久保田真弓