- 12月のご挨拶
30周年、今年をぐるっと一回りして12月
12月ってその月に入っただけで、ドキドキ、ソワソワ、気持ちが忙しくなる
さて2024年、各月滞りなく進んだかといったら、いやいやなかなか大変な一年だった
事が起こると以前は頭を抱えこんでいたが、近頃の私はこの場をどう切り抜けようか…
とちょっと目を閉じ考えているうちにウトウト…
え!え〜っ寝ちゃっている
そう これ老化、もしくは鈍感力の極み
身体や意識の衰えが諸所難題をやんわりと取り組ませようとする
そう考えると何だか歳をとるのも悪くないけど
ガッツリ老いていくにはまだちょっと早い
師走の街中に飛び込むとジングルベルや、年末用の準備で否が応でも気持ちを急かす
スマホ見ながらトロトロ歩く輩にイラッとし、でも口には出来ず
電車から降りたそばから携帯に目を奪われて動きの悪い奴に鼻息荒くなりそうな自分を抑え
「あーぁ、忙しい〜」の波に乗ってシャカシャカ歩く12月
振り向けば2024年最後のカレンダーが所在無げに一枚貼り付いて寂しそう…
とりあえず「ありがとう」と言おう
この一年に
久保田真弓
Story
寄稿
萬器三十周年に添えて
土と火と水、そして手技。器は、自然と人間の接合点で生まれる表象である。その意味や価値を無言のうちに語りかけてくるから、私たちは器という存在に惹かれるのかもしれない。
あえて「器」と書いたのは、このたび三十周年を迎えた「萬器」の名前にちなんでのこと。もちろん、「器」は、工芸から生み出されるすべてのものに置き換えられる。今日まで三十年の長きに亘り、「萬器」が扱ってきた表象のかたちは数限りない。それらひとつひとつが誰かの手に渡り、親しく使われ、愛されながら、この世界のあちこちに点在する様子は何かに似てはいないか。無数に散らばる星々を線で結んだとき、まなうらに浮かび上がる図形。それは私に星座を想起させる。
思えば、「萬器」は、歳月と空間をつうじてものとひとを交差させ、繋ぎ合わせながら拡張する役割を任じている。着々と、黙々と。これもまた創出の表現である。
平松洋子 Yoko Hiramatsu
作家、エッセイスト。東京女子大学文理学部社会学科卒業。2006年『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞、2012年『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞、2022年「『父のビスコ』で読売文学賞を受賞。『食べる私』『日本のすごい味』『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』『ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け』など著書多数。