9月のご挨拶

コロナ禍開催で無観客試合が多かった東京オリンピックから三年、
パリオリンピックが開催され、真夜中のライブに釘付けの日々だった
印象に残った試合に思いを巡らせれば柔道、阿部詩さんの試合だった

順当に勝ち進んでいくと思っていたら、一瞬の隙にストンと一本取られてしまった
監督に縋りつき号泣する詩選手、
片手に赤いサンダルを握ったまま詩選手を抱きしめる監督の姿
それを画面で観てボロボロと涙が止まらなかった

その様子に一部批判めいた意見もあったけど
あの試合を最初からちゃんと見続けていたならそれはどうだろう
たった一つしかない答えを求め、
それに邁進し、
全身全霊に挑んでも神さまは時として試練を与える
私たちはあんなにも夢中に目的を持って生きているだろうか?
生きていく中に叶わないことはいっぱいあるがそれをまざまざと見せられ、
泣けたし自分の切なさのように感じた

時を置かず会場観客から「ウータ!ウータ!」のコールが沸いた
きっと観ている人の感情にも入り込んだからだ
スポーツは筋書きのないドラマ
だから心が震える
これもオリンピックの意味の一つではないか


パリの街は熱い余韻と共に秋に移る


             久保田真弓