六月のごあいさつ

九州に小さな家がある

コロナ禍に少し手を入れてシンプルな室内作りにした
先日久しぶりに仕事を絡めて訪ねたその家は扉を開けたがクールに沈黙を決め込んでいる

それはそうだ、だって一年ぶり
全ての窓を開け放し空気を入れ替え、そそくさと掃除を始める
家は最初に私を拒否し、私は私でオロオロと機嫌をとるように掃除するがこのところ再訪のパターン

家って何だろう
箱でありながら、単純な箱ではない
人が触れ、人が動き
温度や風を取り入れてこそ家なのだ
それぞれ個性に合った暮らし方をし、
その人が快適だったらそれでいい
それよりひと気のない家ほど切ないものはない
その家で人の成長を見つづけ、笑い声や嘆きやため息を全て引き受けてきた家族の家
そこで一緒に時を刻んできたのだから

田舎道、人が住まなくなった家が廃屋になり
所在なさげに建っている
あっ、雨
青葉に重さを落としながら雨が降りだした
どうやら梅雨に入ったようだ

         久保田真弓