二月のごあいさつ

仕事柄、地方を訪ねることが多い

地方都市に行くとたまに路面電車に出くわす
函館・広島・鹿児島など
一両編成か、二両編成でその都市らしい風景にゆっくり街ををぬっていく行く姿が好きだ
一歩踏み込んで路面電車に乗ってみると、
その街らしい様子がもっと身近に見えてくる
 「◯◯高校前〜」でザザッーと学生服が乗り込んできて、若々しい騒めきになり、
「◯◯商店街入り口」で一気に暮らしが反映された様子に変わる
聞くとはなしに耳に入ってくる方言もいい、何だか好きだなぁ路面電車

ほとんど地方まわりは最寄りの空港からレンタカーが多い
総じて作家さんの仕事場は山あいにあるからだ

好きな地方の風景で一番最初に目に浮かぶのが能登半島の家並みだ
山あいを縫って走り、ぽつりぽつりと黒々とした瓦と塗料が軽く塗れた板塀、いかにも日本家屋らしい風景が現れる

山合の深い緑と艶のある黒瓦と茶色の家屋、
思わず車を止めて見入ってしまうくらい
美しい…。

あの風景は消えたのだろうか
耐震構造の建物は残ったというが…
取り戻せない美しさがとても切ない

厳しい寒さはあとひと月で終わる
せめて今年の二月は緩んでほしいと願う

             久保田真弓